2012年にデビュー15周年を迎え、9月19日にキャリア初のベスト・アルバムをリリースしたGRAPEVINE。その彼らの15周年記念ライヴが、9月26日にNHKホールにて行われた。ベスト盤をリリースした直後ということもあり、歴史を振り返るようなナンバーを披露した一夜。これから先が更に楽しみになるライヴの軌跡をどうぞ。
活動15周年を記念したベスト盤を配信中
GRAPEVINE / Best of GRAPEVINE 1997-2012
【配信価格】 mp3 : 単曲 250円 / アルバム1800円
【DISC1】
1. 覚醒 / 2. 君を待つ間 / 3. 遠くの君へ / 4. 会いにいく / 5. ナツノヒカリ / 6. リトル・ガール・トリートメント / 7. OurSong / 8. 望みの彼方 / 9. here / 10. 白日 / 11. スロウ / 12. アナザーワールド / 13. 風待ち / 14. 光について / 15. Everyman,everywhere
【DISC2】
1. 真昼の子供たち / 2. Glare / 3. 放浪フリーク / 4. Darlin'fromhell / 5. RAKUEN / 6. 小宇宙 / 7. CORE / 8. GRAVEYARD / 9. 指先 / 10. Silverado / 11. エレウテリア / 12. 豚の皿 / 13. 超える / 14. 棘に毒 / 15. FLY
>>ベスト盤『Best of GRAPEVINE 1997-2012』の特集はこちら
GRAPEVINE 15th ANNIVERSARY LIVE@渋谷・NHKホール
デビューから15年という節目を迎えたGRAPEVINE。そのキャリアを網羅したベスト盤のリリースと今回のアニヴァーサリー・ライヴは、ここまでの彼らの歩みを共有してきたファンにとってはなによりも感慨深いものになったことだろう。とはいえ、こうした現在の総括モードはあくまでも数字上の区切りよさによるものであって、当の本人達からすれば特にそれ以上の大きな意味を持つものでもないのかもしれない。そもそもこのバンドのキャリアをそう簡単に総ざらいできるはずもないのだ。それはこの日のライヴで披露された計26曲のうち、半数がベスト盤未収録のものだったことにも表れていたように思う。
ライヴは最新作『MISOGI』からの２曲で幕を開けると、そこから前半はデビュー曲「覚醒」に至るまで、バンドの歴史を遡っていくような流れで一気に進んでいく。そういえば昨年に筆者が取材したとき、田中和将は「基本的に僕らはずっと地続き的な感覚の持ち主だと思う」と話してくれたが、確かにこうしてこのバンドの15年間を辿ってみると、彼らのキャリアに具体的なターニング・ポイントを定めるのはなかなか難しい。もちろん彼らを一躍人気バンドに押し上げた「スロウ」のヒットや、リーダーでもあった西原誠の脱退はバンドのキャリアを振り返る上であまりに重要なトピックではあるが、あくまでも音楽性に関して言えば、彼らは結成当初からの指針をそれほど大きく変えることなく、この15年間を歩んできたように思える。言葉にすると簡単に聞こえるかもしれないが、奏者の入れ替えやセールスの変動、あるいは時節のトレンドなどに惑わされることなく、バンド内で生まれた楽曲制作面の課題を着実に克服していくのは決して容易なことではない。そして、そうした一見クールな姿勢を見せながらも、いつも熱量の高い作品をリスナーに放ってきたのが彼らの憎いところだと思う。
さすがにアニヴァーサリーだけあって、しばらくライヴで聴ける機会のなかった曲が次々と披露されていく。とはいっても、この15年間で演奏力の向上はもちろん、アンサンブルの形もアップデートされているので、改めて過去作を聴き返すときはまた違った印象を受けるのが楽しい。MCで田中も「どシンプルにやります」と語っていたように、特になにか仕掛けがあるわけでもなく、いつものようにひたすら曲を繰り出していくステージ上の５人。しかしそうした正攻法のステージングは、むしろバンドの演奏力がかつてないレヴェルにまで達していることをわかりやすく伝えていた。特に「涙と身体」「here」といった初期のナンバーになると、それがより一層際立って聞こえるようだった。まさにその初期を代表する曲「光について」で本編を終え、『イデアの水槽』収録の「鳩」でアンコールに突入。西川弘剛と高野勲が向かい合うようにしてタムを叩く姿に会場も沸き上がる。さらにはなんと彼らがインディ時代にリリースしたシングル曲「TIME IS ON YOUR BACK」も披露。ダブル・アンコールでは田中も「感無量です」と思いを口にし、「エレウテリア」、「Everyman, everywhere」で大団円を迎えた。
総じて、最初期の楽曲から最新作までを網羅した内容でキャリア全体を振り返りつつ、現在のグレイプバインが充実した状態にあることも再認識させられるライヴだった。もちろんこれでなにかが終わったわけでもなければ、逆になにか特別なことが始まるわけでもない。これまでのように彼らはまた次の作品に標準をあてて動き出すだろうし、こちらとしても『MISOGI EP』を聴いた段階で、きたるべきフル・アルバムへの期待も大いに高まっているところだ。それだけでなく、彼らがメジャーの最前線に立つロック・バンドとしてこの先にどんな歩みを見せてくれるのかは、恐らくこれからのシーン全体を見渡す上でも大きな意味を持っていくはず。ここから５年後、10年後のグレイプバインが見たい。思わずそんな気持ちが込み上げる夜だった。(text by 渡辺裕也)
GRAPEVINE 15th ANNIVERSARY LIVE
2012年9月26日(水)@渋谷・NHKホール
開場 / 開演 : 18:00 / 19:00
PROFILE
GRAPEVINE
1993年から大阪で活動を開始する。
結成メンバーは田中和将(Vo/Gt)、西川弘剛(Gt)、西原誠(Ba)、亀井亨(Dr)。
Marvin Gayeの「I heard it through the grapevine」からバンド名を名づける。
セルフ・リリースのカセット・テープが話題となり、1997年にポニー・キャニオンと契約。
1997年9月、ミニ・アルバム『覚醒』でデビュー。
2002年に西原誠が脱退し、金戸覚(Ba)、高野勲(Key)がメンバーに加わる。
現在までに12枚のフル・アルバムをリリース。2011年には長田進氏をプロデューサーにむかえたアルバム『真昼のストレンジランド』をリリース。
2012年9月には、ベスト・アルバムを発売予定。
>>活動15周年を迎えるGRAPEVINEの過去作14アルバムのレビューはこちらから
