2012/06/28 00:00

自主レーベル「SALTMODERATE」を設立し、デビュー30年を経て尚、精力的な活動を繰り広げる安全地帯。 OTOTOYでは、スタッフや芸人、ミュージシャン、アイドルなど様々な立場から安全地帯を語ってもらい、その魅力を多角的に浮かび上がらせるべく、7日間連続毎日更新の特集記事「君は、安全地帯を聴いたか?」を展開。

第二回の今回は、安全地帯の音楽に多大な影響を受け、「安全地帯を越えられないと思ったからバンドを解散させた」と言う、中田裕二。彼がどのように安全地帯と出会い、どこに惹かれたのか? はたまた、現在の日本の音楽シーンに於いて、安全地帯はどういう存在なのか? 世代は違うが、同じ土俵で闘うミュージシャンの語る、安全地帯というロック・バンド。一足早く新曲を聴いた感想と併せて、お楽しみいただきたい。(text & interviewed by 藤森大河)

「君は、安全地帯を聴いたか?」とは?
ミュージシャンや芸人、アイドルたちが日替わりで、自分の思う、ミュージシャン・安全地帯の魅力を語ります。ジャンルや年代、関係性は様々。それぞれの角度から安全地帯を浮かび上がらせる、7日間毎日更新の集中連載。

>>第一回「今、なぜ、安全地帯なのか?」 by 桜井葉子(Steezlab Music)

安全地帯

第二回「理想のロック・バンド 安全地帯」 by 中田裕二

――中田さんは「ワインレッドの心」のカバーをしていたり、インタビューでも安全地帯に強く影響を受けたと仰っていますよね。

中田裕二(以下、中田) : そうですね。出会いは3歳くらいの頃で、車の中で親父とおふくろが『安全地帯Ⅱ』っていうアルバムを、よくかけてたんですよ。確か、カセット・テープのジャケットで、キティ・マークの猫の絵が描いてあったことを覚えています。まぁ、小さい時なので意識的には聴いていないんですけど、家の中でも車の中でも、とにかくいつもかかっていました。

中田裕二

――意識的に聴き始めるようになったのはいつ頃ですか?

中田 : 自分から音楽を聴き始めるようになってしばらくの間、意識的に聴くことはなかったですね。それで、自分も音楽を始めて、バンドを結成して、アルバムを2枚ぐらい出して、割と煮詰まっちゃった時があったんですよ。

――それは、椿屋四重奏でですか?

中田 : そうです。和を基調とした音楽を作っていたんですけど、その縛りが自分自身で苦しくなってきてしまって。これからどういうことがやりたいのか悩んで、当時実家のあった仙台に帰った時に、車の中で安全地帯がかかっていたんです。それで久々に聴いてみたら、凄くいい曲ばっかりだなと思って。オリエンタルというか、ずっと歌い継がれてる歌謡曲のような普遍的なものを感じて、これは日本人の琴線に触れるものがあるな、と。こういうことがやりたかったんだ! と再確認しました。それで、アルバムを再度買い直して聴いていくと、かなり奥が深いなということに気付いたんです。当時、歪んだギターのロック・バンドばかり聴いていたんですが、安全地帯はクリーン・トーンが多いのも新鮮に響きました。調べていくとニュー・ウェーブとか、80年代のAORなんかを凄く研究しているみたいで。

――凄く重層的な音の作りですよね。

中田 : そうなんですよね、音のレイヤー感というか。でも無駄な音は一切ない。しかも、時にプログレッシブなことをやっているにも関わらず、玉置さんの歌はとても強く響くっていう、メロディの強さですよね。そのバランスって、やろうとすると難しいんですよ。そういうものを具現化していることに憧れて、安全地帯みたいになりたいなと思いまして。理想的なバンドが、安全地帯なんです(笑)。

――改めて彼らの魅力に気付くきっかけになった曲は何でしたか?

中田 : 「マスカレード」です。その曲がとにかく格好良くて。魔力みたいなものを感じたんですよね。その後、歌詞を書かれた松井五郎さんと仕事をさせていただいたんですが、それも安全地帯が好きだったからってことでお願いしたんです。確か、松井さんがはじめに安全地帯の詞を書いたのが「マスカレード」と仰っていたので、感激しましたね。

――玉置さんと中田さんの歌い方には、艶やかさや色気が、共通してあるように感じました。

中田 : 共通していると言ったらおこがましいですけど。でもやっぱり、よく分からないながらに、小さい時から安全地帯の作品が内包している大人の色っぽさ、エロさは感じていたし、憧れていたかもしれません。エロスっていっても色んな形があると思うんですけど、日本人的な奥ゆかしさもある、品のあるエロスと言ってもいいかな。それが凄く格好良くて、自分でも意識しています。

――なるほど。では、音楽としても、ボーカリストの存在感としても影響を受けているわけですね。

中田 : もしロックの教科書があるとするなら、必ず安全地帯は載ると思います。五章ぐらい使ってもいい。日本でロック・バンドをやるっていうのはどういうことかっていうのを踏まえて、絶対一度は通るべき、くぐるべき門だと思います。

——安全地帯はロック・バンドだと思いますか?

中田 : 間違い無くそうですね。玉置さんの生き方からしてもロック以外の言葉はあてはまらない。ものすごく激しい音=ロックっていう人もいますけど、ロックは生き様なので。アクセル・ローズか玉置浩二かって(笑)。

――では、8月に出るアルバムから、新曲を聴いていただこうかと。

中田 : わー聴きたいですね。

——アルバムの1曲目に入っている「君がいない」です。

~~「君がいない」試聴中~~

中田 : あーすげぇ! 超いい曲! すごい! もうビリー・ジョエルかジェイムズ・テイラーか!

――これが1曲目っていうアルバムも凄いですよね。

中田 : 本当ですよね。めっちゃいい曲ですね。本当に玉置さんは、毎回、更新されますよね。

――というと?

中田 : やっぱり長年やってらっしゃるアーティストさんの多くは、過去の自分を越えられない人も多いじゃないですか。あの頃の方が良かったというようなことがあるんですけど、玉置さんに関してはそれがないんですよね。毎回、1枚のアルバムの中に必殺の名バラードとかハマり曲みたいなものが必ず入ってるんですよね。それが凄い。

――アルバムの作り自体にも影響を受けてる?

中田 : はい。必ず、アルバムに必殺のバラードを入れていくスタンスに憧れて、僕も必ず1曲はバラードを入れてます(笑)。

その人の顔が見えてこないような音楽ってやっぱり大したことないと思う

――メロディへの詞の載せ方も独特ですよね。文字の詰め込み方とか。

中田 : でも、無理がない。桑田佳祐さんとかも日本語を英語のリズムに滑らかにのせますけど、玉置さんも、桑田さんとはまた全然違うベクトルで、凄くきれいにメロディに言葉をハメるんですよ。日本語を滑らかにのせながら洋楽みたいなリズミカルな譜割でメロディを組んでいくっていうのはすごい難しくて。それも… 凄くパクりました(笑)。

――中田さんの曲も、あまり歌に使われないような言葉を使っているイメージがあるんですが、それこそ今おっしゃったような面白さを感じます。

中田 : そうですね、ポップスとかロックをやるうえでブチ当たる壁の一つで、洋楽を好きな人は英語のほうが載せやすいに決まってるんですよね、リズムを打ちやすいというか。それを自分のやり方で克服している人たちがオリジネイターになれると思うんですね。玉置さんは、ファンクとか、ブラック・ミュージックの匂いがする。ブラック・ミュージックって、言葉が細かくリズムを刻むので、日本語をそれにあてようとするとかなり難しいんですよね。でもそれをた易くやってのけている。

――松井さんに詞を書いてもらったときはどうでした? やっぱり自分では載せないだろうなというような言葉が多かったですか?

中田 : ありましたね。字面で見ると凄く照れ臭いようなことまでも、歌にすることで新たな力が生まれる時があるんですよね。それが聴き手に引っかかるっていうことなのかなと思いました。

――安全地帯はそんなに難しい言葉は使ってないですよね。

中田 : 初期の頃の歌詞は、割と、印象とか雰囲気中心ってことで書いてるのかな。言葉、ストーリーじゃなくて、単語単語の面白さだったり、響きだったり。それが、映像として見えてくる感じが強いんですよね。

――詞だけでは見えないような景色が見える?

中田 : うん。松井さんと玉置さん、その組み合わせがマジックを生んでいると思います。

――もう一曲、新曲を。アルバムの最後に入っている「SOS」を。

中田 : この、タイトルを見て一瞬不安を与えてくるところがありますよね(笑)。

~試聴中~

中田 : すごいなぁ。今、何歳でしたっけ?

――53歳ですね。

中田 : 53歳でこの曲、凄いなぁ。アレンジなんか完全に洋楽みたいですね。この最後の「SOS」の外し方、これが出来ないんですよ。THE POLICEっぽい入れ方ですよね。

――PRINCEみたいな雰囲気もありますね。

中田 : そう! 安全地帯って凄くPRINCEっぽさありますよね。あの当時聴いてたのかなぁって。本当に音楽のレベルが高いですね。でも全然難しく聴こえない。それがやっぱり一番凄いと思う。物凄く良質なAORを聴いているような。未だにこのクオリティのものを作られてるっていうのが、僕ら若手は本当に、本当に頑張らなきゃいけないですね。

――中田さんがバンドでやりたいのはやっぱり歌を聴かせることですか?

中田 : そうですね、凄く丁寧にちゃんと作られた音楽の上に美しいメロディが載ってるっていうのが一番理想的。それはでもなんか、器用に削ぎ落としていくっていう意味ではないんですけどね。ちゃんとそこには、遊びもあったり、実験的なこともやっているんだけど、ちゃんと届くというか。そういう技術を今学んでいるところで。やっぱり、センスが良いんでしょうね。

――技術ではなく、もっと自然にやっているように聴こえますか?

中田 : 自然にやってるんでしょうね。意図的にやるんだけど、結果として自然なものになるという。最終的に自然なんですよね。アイデアなりメロディなり歌詞なりに、玉置浩二という人間が繋がってる、切れてないんですよ。普通こう「あーじゃあこれやろうかな」って、それはどこかからの借り物でしかなかったりするんですが、それがちゃんと玉置浩二という人間を通って、フィルターを通って出てくるから、自然なものとして無理なく響いていくるのかなぁって気がします。

――それで全部が違和感なく繋がると。

中田 : はい。その辺を、今の日本の音楽はあまり考えていないような気がするんですよね。その人ありきっていう大事なポイントが抜け落ちてる気がするんです。だから代わりがいくらでも効くっていう。もう代わりが効かないじゃないですか、このバンド。

――存在感というか人間力というか。

中田 : そう。形だけ出来ていれば、実は中の人は誰でもいいんじゃないかっていう、そういう聴こえ方をしているんじゃないかという音楽が凄く多い。これってこの人だったっけ? あの人だったっけ? みたいなのが多い気がする。

――インプットをしっかりとしたうえでアウトプットしなければ、土台が無いものでは何も伝わらないですよね。

中田 : 若い頃は、ノウハウも知識もないから、取り込む作業のほうが多いと思うんですよね。で、どんどん色んなことを勉強しながら自分の出来ることを増やしていく、技を増やしていく。その時に、この技があればああいうことも出来るなって、今度はやり方も分かってる。最終的に、結果その人しか出来ないものになればいいのかなぁって。なれないんですけどね、才能がないとなかなか。玉置さんは音楽だけで音楽をやってないと思います。人生そのものが音楽なんだと思います。だから説得力があるし、計り知れないエネルギーみたいなものがある。必然なんですよね、この人が音楽をやることが正義だみたいな(笑)。玉置浩二みたいな人がいることが、日本の音楽にとっていいことなんですよね。本当に宝だと思いますよ。現在進行形でこのクオリティのものをちゃんと作ってるっていうのが。

――人間が剥き出しの音楽というか。

中田 : その人の顔が見えてこないような音楽ってやっぱり大したことないと思うんです。安全地帯っていったら、凄いですよね。玉置さんが、ありありと(笑)。でも、そういうもんだと思うんですよね、いい音楽って。今どういう気持ちで歌ってるのかなとか、一体どういう経験したらこういう歌が歌えるんだろうとか想像させてくれるような。そういうものが染みるんですよね。30歳を越えてから音楽にそういうものを求めるようになってきました。人間の温もりみたいな。

――なるほど。中田さんと玉置さんが競演するところも見てみたいですね。

中田 : いやいやいや(笑)。まあ、夢ですけどね。頑張って、安全地帯みたいに、自分の音楽を聴いた人に何か響かせることが出来るような存在になれれば本望かなと思います。僕にとって、そう思わせてくれる存在、安全地帯です。

PROFILE

中田裕二
1981年生 熊本県出身。

'00年、仙台にて「椿屋四重奏」を結成。'03年のデビュー以降、歌謡曲をベースにした新たなロック・サウンドで多くの音楽ファンを獲得。'11年1月の突然の解散発表は大きな反響を呼んだ。3.11東日本大震災直後には、被災地/被災者に向けての曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリース(収益はすべて義援金として寄付)。6月から8月にかけて行なわれた、カヴァー曲を中心に「歌」に特化したプロジェクト「SONG COMPOSITE」の全国ツアーは全17公演が即日SOLD OUT。これを機に、本格的なソロ活動に入る。その他、'10年6月、田中ユウスケ率いるクリエイター集団、Q;indiviのニュー・プロダクト、「Q;indivi+」のミニアルバムに参加。また、同年7月リリースの杏子のミニ・アルバム収録曲では初めて楽曲提供&プロデュースを手掛ける。

中田裕二 official HP

安全地帯
玉置浩二(たまき こうじ、1958年9月13日) - ボーカル、ギター
矢萩渉(やはぎ わたる、1957年6月27日) - ギター
武沢侑昂(たけざわ ゆたか、1958年5月16日) - ギター
六土開正(ろくど はるよし、1955年10月1日) - ベース、ピアノ、キーボード
田中裕二(たなか ゆうじ、1957年5月29日) - ドラムス

<1980年代を代表し、ヒット曲の数々で時代を席捲したロックバンド>
1982年にキティレコード(現・ユニバーサルミュージック)と契約し、『萠黄色のスナップ』でメジャー・デビュー。
1983年、サントリーから発売された「赤玉パンチ」のCMソングに起用された「ワインレッドの心」が大ヒット。一躍全国にその名が知れ渡る。その後も「恋の予感」、「熱視線」などの楽曲を立て続けにヒットさせ、1980年代を代表する人気グループの地位を不動のものにする。1985年には「悲しみにさよなら」が大ヒット。

<活動休止、その後>
1988年秋、香港コロシアムでのコンサートを最後に突然活動休止を宣言。
1990年、7thアルバム『安全地帯 VII -夢の都』のリリースを機に活動を再開。翌1991年には『安全地帯 VIII -太陽』をリリース。1992年12月、アコースティック・スタイルでのコンサート・ツアーを終了後、再び活動を休止。『ひとりぼっちのエール』は翌1993年2月10日にリリース。
活動休止を境に玉置はソロでの音楽活動はもちろん俳優業にも活動の場を広げる。自身最大のヒット曲となる「田園」をはじめ、「メロディー」「MR.LONELY」などソロでも多くの楽曲を発表する。他のメンバーも個々の活動に入る。この時、安全地帯の所属会社がキティレコードからソニー・ミュージックエンタテインメントに移籍。
2001年頃より安全地帯のレコーディングを開始する。
2002年7月10日に10年ぶりのシングル『出逢い』をリリース。同年8月7日に9thアルバム『安全地帯 IX』をリリース。
2003年10月22日には10thアルバム『安全地帯X -雨のち晴れ-』をリリース。ツアーでは5人全員が揃い、80年代の活動の場であったライヴ・ハウス「shibuya eggman」でもライヴを行う。ツアーは2003年12月で全日程を終了。
ツアー終了後の2004年以降はグループ活動を休止し、再び個々の活動に入る。
2010年、ユニバーサルミュージックへ移籍。同年3月シングル『蒼いバラ / ワインレッドの心(2010ヴァージョン)』を皮切りに5月シングル『オレンジ / 恋の予感(2010ヴァージョン)』、アルバム『安全地帯XⅠ☆Starts☆「またね…。」』、6月アルバム『安全地帯 HITS』を立て続けにリリース。7月から10月には『安全地帯“完全復活”コンサート・ツアー2010~Start&Hits~「またね…。」』を敢行。
2011年には8月シングル『結界 / 田園』、9月アルバム『安全地帯 XⅡ』、11月アルバム『安全地帯 XⅢ JUNK』をリリース、9月から12月には『安全地帯コンサートツアー2011「田園~結界」』を敢行。
そしてデビュー30周年である2012年、新たな境地を開くべく、安全地帯・玉置浩二インディーズ・レーベル「SALTMODERATE」を7月に発足し、本格始動開始。

>>SALTMODERATE HP

30th Anniversary Album

『The Ballad House~Just Old Fashioned Love Songs~』

デビュー30周年を迎え、連綿として綴られてきたバラードで、メンバーの思い入れの深い曲を 中心にアレンジを一からやり直し、リレコーディングを敢行! 名曲10曲に2曲の新曲を加え た全12曲!
2012.8.22 (水) リリース

30th Anniversary Concert "The Ballad House"

2012.9.1 (土) いわみざわ公園野外音楽堂キタオン
2012.9.5 (水) 東京国際フォーラム ホールC
2012.9.6 (木) 東京国際フォーラム ホールC

>>Live Schedule

SALTMODERATE発足記念USTREAM特番『ソルトモ!』放送決定

2012.6.30 (土) 22:00~ : 直前特番
2012.7.1 (日) 20:00~ : 番組開始
安全地帯&玉置浩二がいよいよUSTREAMに初登場!
自主レーベル「SALTMODERATE」レーベル発足を記念して、一切台本ナシの生配信をお 送りします。
果たして玉置は、ちゃんと現れてくれるのか?!
どの一瞬も見逃さず、リアルでリアル・タイムな安全地帯をどうぞ皆様自身の目で見届け てください。

>>USTREAM CHANNEL

「君は、安全地帯を聴いたか?」展開スケジュール

第一回(6/27) : 「今、なぜ、安全地帯なのか?」 by 桜井葉子(Steezlab Music)
第二回(6/28) : 「理想のロック・バンド 安全地帯」 by 中田裕二(ミュージシャン)
第三回(6/29) : 「安全地帯 / 玉置浩二へのラブレター」 by ???
第四回(6/30) : 「はじめてのあんぜんちたい」 by ???
第五回(7/1) : ???
第六回(7/2) : ???
第七回(7/3) : ???

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