『All Along Kyoto Tower(京都タワーからずっと)』収録アーティスト解説
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01. HOTEL MEXICO 「We are 69 years apart」
●ゆーきゃんによる解説
いまや京都を代表する一つのカオといっても過言ではないSECOND ROYAL。すばらしきトラック・メーカー、バンドたちが在籍するこのレーベルから、今回はHOTEL MEXICOに参加してもらいました。プロフィールをご覧いただければお分かりになると思いますが、とにかくこの人たちは耳が早い。海外の最先端をいち早キャッチして、なおかつすっと消化してしまうセンス。新世代だなあと思うわけです。
02. YeYe(ィエィエ) 「woo lino sunte on lino」
●ゆーきゃんによる解説
MUSEHALL、VOXHALL、nanoと、活況を呈するライヴ・ハウスの店長に「最近面白いアーティストいた? 」と何気なく尋ねたところ、みんな一斉に「イェイェ」の名を挙げたことがあります。現行の自主音源は下北沢mona recordsとライブ会場でしか入手できないのですが、これはさらにいまだ発表されていない秘蔵音源です。全部のパートを自分で演奏するしてこのクオリティ。同時代の海外インディの空気を感じさせつつ、ご本人はBOATが好きだとツイッターで告白もされていました。自分にしっくりくる表現を確実に知っているひとだからこそできる、新しい日本語ポップスだと思います。
03. my letter 「壁」
●ゆーきゃんによる解説
プロフィールにもありますが、いわゆる「若手」と呼ばれる層のなかで、いちばん幅広いシーンのイベントから出演依頼を受けているであろうバンドがこのmy letterではないかと思います。そして彼らの素晴らしいところは、そうやって様々な場所で出会った共演陣やお客さんからのフィードバックを確実に自分たちの音楽に反映させているところです(意識してなのか、無意識なのかは分かりませんが… )。柔らかいのにとがっていて、けして明るくはないのになぜか眩しさも覚える、不思議なバンドです。
04. 興梠マリ 「最後のうそ」
解散後、「興梠マリ」としてソロ活動を始める。 シンディ・ローパーのliveコーラス、ロケットマン、アルバム楽曲へのゲスト・ボーカル等などに参加。現在は弾き語りのほか、サポートにSAKEROCKのドラム、伊藤大地を迎えてのデュオ編成でライヴを行っている。
●ゆーきゃんによる解説
興梠さんは、もともとは京都で活動されていたのですが、5年間ほど東京に拠点を移し、昨年戻って来られたそうです。たまたま知人を通じて音源をいただいたのですが、まだあまりこちらでのライヴは多くないにも関わらず、WHOOPEE'Sのブッキング・マネージャー山田さんがラジオで絶賛したり、話題の兆しを見せつつあるシンガーです。自主制作のCD-Rの中にはヒップホップを取り入れた曲があったり、ニーナ・シモンを思わせる深みのある曲があったり、好奇心と実力がこの人の中で化学反応を起こしているのが分かって面白かったです。
05. chori 「踊り場から愛を込めて」
1984年、京都は西陣生まれ、御幸町在住。 中学時代から詩人を名乗り活動しはじめる。 従来の詩の朗読という概念から逸脱した共時性の強いライヴ・パフォーマンスは、一種ビート直系のスポークン・ワーズ。散文から韻文、流行語から古語まで軽々と行き来することばの発信力は鮮烈な印象を残す。 日本全国への遠征を頻繁に行うほか、08年には狂言師・茂山童司とのユニットでヨーロッパ・ツアーを敢行した。 詩人、作家という肩書以外では、livehouse nano(中京区)のブッカーという一面をも持つ。 第一回詩学最優秀新人賞受賞。主な著書に詩集「chori」(青幻舎)、「にしむくさむらい―詩人choriの京都十二ヶ月―」(ランダムハウスジャパン)など。 これまでに3枚のCDアルバムと1枚のシングルをリリースしている。 現在は岡田康孝(Wood Bass)、ムッティー(Guitar)、濱崎カズキ(Drums)とのバンド編成でのパフォーマンスを中心に活動中。
●ゆーきゃんによる解説
詩人でありながら、日本各地でライヴ・ハウス・ツアーを敢行し、自身もライヴ・ハウスのブッキング・マネージャーとしの経歴を持つ、不思議な青年chori。実体験から生まれてくる情念や感慨をポンプで一気に膨らませるように、詩を注ぎ込み声を流し込むそのステージは、ときにいたたまれなくなるほど自意識をむき出しにしていて、同じくことばを使って表現する者として、驚きのようなものを教えられます。今回の収録曲は初めてバンドで作ったという、録りたての作品。
06. ワゴンズ 「WONDERLAND」
日常の中に潜む光と影、正の感情と負の感情、その全てを包み込む歌詞。 2004年に京都にて結成。2008年1月?3月、自主企画に併せて3ヶ月連続でシングルをリリースし、全タイトルとも会場手売分が即日完売となる。 その後、「群青フレーズ」「夏のぬけがら」の2枚のアルバムをリリース。JEUGIAにてチャート2位を獲得するなど、好セールスを記録。2009年には京都・磔磔にてワンマン・ライヴを行い、200人を超える動員を記録する。 2010年5月に、3人編成となり初のアルバム「醒めて見る夢」をリリース。 JEUGIAにてチャート1位を獲得し、山陽放送や京都三条ラジオカフェなどのラジオ局においてプッシュ曲に選定されるなど、各方面で高い評価を受ける。 FM京都主催「Live Donuts」「MUSIC UNDER THE SKY」や、FM802主催「MINAMI WHEEL」「ROCK'N'ROLL SUNDAY」など、多数イベントに出演するほか、大阪十三・FANDANGOにて立ち上げた企画イベント「SALVATION!」を中心に、全国的にライヴ活動を展開中。
●ゆーきゃんによる解説
前身バンドのころから、西部講堂前広場やCLUB METROなど、あちこちでボーカル梶本君の歌う姿を見てきました。まっすぐで、きらきらしていて、でも「光の強いところには影もまた濃い」という格言の通り、突き抜けたメロディのなかに憂鬱さも感じさせてくれる彼の歌が、ぼくはとても好きです。声が強く、日本語がびしっと通ってくるのですが、実のところ90年代~00年代の洋楽への愛情がぎゅっとつまった豊かなサウンドも、聴いていて嬉しくなります。
07. LLama
構築と即興のコントラストで創造される世界観は、現代の日本で忘れられている日本固有のメンタリィティを感じさせる新しいポップ・ミュージック。 2008年6月にはメンバー自身の手によって録音から全てを手掛けられた1stALBUM『ヤヲヨロズ』をSundayTuningよりリリース。 以降、KYTE(UK)との全国ツアーやPARAとの2マン・ライヴなどで注目を集め、2010年6月には地元京都で初のワンマン・ライヴを行い、大成功を修める。 現在は今秋リリース予定の2nd ALBUMの制作に奮闘中。
●ゆーきゃんによる解説
ツイン・ドラム、アップライト・ベース、管楽器に、PAもメンバー… という独特の編成、独自のスタンスで着実に実力と支持を身につけてきたLLama。わかったような評をここに書くのもおこがましい気がするのですが、現行のメンバーによる、現在の彼らの音はいま一番よい状態にある気がします。OTOTOYでのフリー・ダウンロードも好評なようですし、あたらしくリリースされるEPからアルバムを経て、この先どれだけの飛翔が待っているのか、とても楽しみです。
08. 竹上久美子 「夕暮れそらに」
2003年にピアノ弾き語りで音楽活動をスタートし、関西を中心に各地でライヴを行う。 心に響くメロディ・センスと透き通る歌声は評価を得ており、数々のCMソングの制作・歌唱/映画や演劇の音楽制作等に携わる。 2007年からは隔月での企画イベント、定期的な東京ライヴを実施し、「MINAMI WHEEL」や「ボロフェスタ」等、音楽フェスにも出演。 2010年秋から、老舗ロック・バンドCHAINSのラリー藤本を共同プロデューサーに迎え、マザーシップスタジオにてフル・アルバムの制作を開始。 2011年3月、アルバムに先駆けて先行配信EP「ランプ」をリリース。 今年秋にフル・アルバム発売予定。 フレキシブルな歌世界は、まだまだ進化し続ける。
●ゆーきゃんよる解説
もちろんライヴ・ハウスでの活動も盛んながら、コミュニティFMのパーソナリティをつとめたり、最近では今年京都で開催されるイベント「国民文化祭」マスコット・キャラクターのテーマ・ソングを作ったりと、ぼくがインタビューで話したような「インディー」の世界とは少し離れた「京都」で着実な評価を獲得しているSSWが、竹上久美子さん。街ゆく人の足を自然と止めてしまうような普遍的なポップスを奏でながらも、独立独歩のスタンスで自分の活動の足場を作ってゆく彼女のバイタリティには、ほんとうに脱帽します。音楽的に少し模索していた時期もあったようですが、いまの彼女の歌は、気負いも衒いもなく、ルーツへの敬意と好きな音楽を続ける喜びが滲みだしていて、とてもいい状態だなあと思います。
09. TRIPMEN 「TRIPMEN (VIDEO MIX) 」
Brake beatsに絡まる超アッパーなギター・サウンドと破天荒なライヴ・パフォーマンスでオーディエンスを圧倒。 合い言葉は『fucking noise fucking noise FUCKIN!!』
●ゆーきゃんによる解説
京都METROにて隔月開催の980円イベント「感染ライヴ」が生んだ(あるいは生もうとしている)スターがこのTRIPMEN。ぼくが知る限り京都で一番耳の早いリスナーだと思っている或る友人(ちなみに彼はDJで、あまりライヴ・ハウスには顔を出しません)が、「2011年の京都にプロディジーの再来がいると聞いた」と言って彼らのショウを観に来たときには、ほんとうに驚きました。エンターテイメント性に満ち溢れたその立ち居振る舞いは、この音源からもうかがえると思いますが、YOUTUBEにはさらに映像版もアップされていますのでぜひチェックしてみてください。
10. pasteur 「wddo - cradle」
これまでにMY WAY MY LOVE、8otto、MONO、モーモールルギャバン、などといった個性派バンドとの共演を経て現在に至る。 ツインギターを中心にしたアグレッシヴなサウンドを放つ反面、フルート/サンプラーによる叙情性のある奇妙な世界観を魅せ、ベース、ドラムによる変拍子でエグいリズム隊。と、二面性ならぬ三面性、四面性をも持つバンドである。その無限大に放出されるサウンドは壮大で未知の世界だ。今後の活動に最も期待されるだろう。
●ゆーきゃんによる解説
現在の編成での活動が活発になったのが2007年(ぼくがいちど京都を離れる前年)ということで、ちょうど京都シーンが劇的な変化を遂げてゆく過程の、一翼を担ってきたバンドがこのpasteurだと思っています。ことばがない分だけ、感情やイマジネーションを現出させるための高い演奏力と、「このバンドにしかなしえない」という圧倒的なオリジナリティを同時に求められる、インスト・バンドの宿命を見事に引き受けて、京都にパスツールあり、というポジションまできた彼らが満を持して7/20に放つファースト・フル・アルバム『5/0wΣave(スロウウェイヴ)』からの一曲。
11. FLUID 「ヴァーチャファイター20XX」
●ゆーきゃんによる解説
2000年前後から活動を始めた同世代のバンドたちのなかには、10年の月日を経て、解散したりペースを落としたりするグループもたくさん居ます。学生が多く、そのままこの街に居ついて音楽を続けるということが必ずしもすべてのバンド・マンにとってリアリティのある話ではないという事情のなかで、精華大学にて結成された後、2度のメンバー・チェンジを経ながらも常に最前線に居続けているのがFLUIDというバンド。かつてボアダムスを生んだ京都という土地で「オルタナティヴ」を体現し続ける最重要バンドと言えるでしょう。今回の収録曲は待望の新譜へ向けてのプリプロ・テイク、4人編成では初の音源です。
12. bed 「修羅場」
以来、地元京都を拠点に、ライヴを中心に活動。 これまでに、2枚のアルバムと1枚のEPを発表。 90年代のUSオルタナやパンクに影響を受けながら、JOAN OF ARC等現在進行形の海外バンド達とも共振し合い、「マイペースに生活に根ざした音」を追求。 けして派手ではなく、テクニカルではない演奏ながらも、人の心に残る、 そんな音楽を目指して日々活動中。 今秋、7inchをリリース予定。
●ゆーきゃんによる解説
bedを観るたびに、いいバンドだな、と思うわけです。何を歌わなくてはいけなくて、なにを大事にしたいのかが一聴してすぐわかる、そんな音楽は実のところすごく難しい。彼らのスタンスはアメリカン・ハードコアの土壌から多大な影響を受けているように思えるのですが、たとえば龍谷大学の教室やスタジオでのライヴを定期的に行ったりするなど、動きそのものも見ていてとても面白く、尊敬の念すら覚えます。この音源は、おなじく京都の盟友バンドdOPPOの橋本君が監修したコンピ”hAkAbA V.A”に収録されていた一発録音の激渋曲。
13. 欠伸-ACBIS- 「甘い砂(空に沈む/DEMO)」
●ゆーきゃんによる解説
それぞれがそれぞれの音楽活動をするなかで、でも気心の知れた仲間同士で奏でたり作ったりすることの面白さを忘れたくない! そういう気持ちで続いているバンド。大阪・福島のスタジオにて、ベーシック・トラックを一発録音で録ったデモ音源から一曲。
14. neue nahel 「January never keeps secrets (demo)」
●ゆーきゃんによる解説
audio safariのファースト・アルバムが絶賛を呼び、次作を待つ声が多数飛び交う中で突然バンドを解散させたコンポーザー・吉賀くん。彼が率いる新バンド、neue nahel。これが正真正銘初めて世に送り出す音源です。リズム・トラックが生ドラム(CHAINS/世武裕子さんのサポートなどでおなじみの伊藤拓史さん)ではなく、打ち込みを使用しているので「あくまでデモってことでお願い」と念を押されましたが、ここからでも充分にバンドの全体像が見えるのではないでしょうか。音楽性の高さはすでにaudio safariで実証済み、新メンバーとなってのこの先が非常に楽しみです。
15. 空中ループ
のびやかで心地よいメロディー、独自の浮遊感と躍動するリズム、小さくも確かに心を灯す詞。 それらが絶妙に合わさる音世界は唯一無二。 これまでのリリースCDは、タワレコ新宿店、京都店、梅田マルビル店で発売日インディーズ・チャート1位を獲得。 また全国のタワーレコードがプッシュするアイテム「タワレコメン」に選出される等々、好セールスを記録。 2011年より、プロデューサーに大谷友介(SPENCER, Polaris, ohana)、レコーディング・エンジニア&MIXに益子樹(ROVO)を迎え、新プロジェクト「Walk across the universe」が始動! 『この国(日本)を変える、音楽の一端を担う』というおおきな目的に向かって、ちいさな日常を邁進している。
和田 直樹 (Guitar/Protools)、さとう かおり (Drums)、松井 省悟 (Vocal/Guitar/Programing)、森 勇太 (Bass)
●ゆーきゃんによる解説
ライヴ・ハウスがヒーローを育てるという土壌が、京都にはそぐわない(いい音楽が突然変異的に生まれて、野放図に広がってゆく)とずっと思っていたのですが、彼らに関しては少し違うのかもしれません。インタビューの中でも言いましたが、ハコがコミュニティを作るというここ数年の動きのなかで、重要なポイントである河原町三条VOX HALL、その中心にあるバンドのひとつが、空中ループです。実直さとイマジネーションを兼ね備えたスケールの大きな音楽は、一日にしてなったのではなく、コミュニティの中で鍛えられ磨かれ、そして自らコミュニティを形成しながら、このオムニバス”京都タワーからずっと”は、彼らの曲で締めくくるとしましょう。登ってきた塔の最上階の、その上にあるのは、無限にループする空中、というわけです。